クラミジア
クラミジアとは
クラミジアは、Chlamydia trachomatisという細菌によって引き起こされる、日本国内で最も感染者が多い性感染症です。特に若年層において感染者が多数存在し、男女比においては女性に多く見られる傾向があります。
クラミジアに感染する原因
クラミジアは感染者の精液や膣分泌液に含まれているため、これらの体液に接触することによって感染が広がります。したがって感染経路のほとんどは、セックス・オーラルセックス・アナルセックスなどの性行為です。また、クラミジアは唾液にも含まれるため、キスを介する咽頭感染や出産時の母子感染、体液が付着した手が眼に触れて生じる結膜感染が起こる場合もあります。
ただし、クラミジア自身は非常に脆弱な細菌であり、粘膜や粘液などの細胞から離れると増殖することができません。したがって、空気中の飛沫感染や、タオルの共用、トイレの便座やお風呂、プールなどからの接触感染の可能性はほとんどありません。
症状・病気の種類
クラミジアに感染すると1~3週間の潜伏期を経て以下の症状が出現します。ただし、男性の50%、女性の80%は無症状です。
クラミジア性尿道炎(男性)
尿道粘膜にクラミジアが感染した場合、クラミジア性尿道炎を発症します。症状は、尿道のかゆみ・不快感や排尿時の軽い痛み、透明から白色の尿道分泌物です。
クラミジア性精巣上体炎(男性)
尿道から感染したクラミジアが上行性に精巣上体に至ると、陰嚢の脹れ、痛み、発熱が現れることがあります。
咽頭クラミジア(男性・女性)
咽頭粘膜にクラミジアが感染すると、咽頭クラミジアを発症します。主な症状は、のどの痛み、腫れ、発熱、頸部リンパ節の腫脹などで咽頭炎に類似した症状が現れます。ただ、多くの場合、症状が軽微であるため病気と認識されにくい傾向があります。その結果、感染に気付かずにパートナーへと感染を広げてしまうことが少なくありません。
クラミジア性子宮頸管炎(女性)
クラミジアが膣や子宮頸管に感染すると、異常なおりもの(臭いや量の変化)、下腹部痛、かゆみ、不正出血、性交痛などの症状が見られることがあります。ただ、多くの場合、無症状であることが一般的です。
子宮内膜炎、卵管炎、卵巣炎、骨盤腹膜炎(女性)
クラミジアは「上行性感染」の特性を持ち、腟から上部への感染が進行することがあります。女性の場合、クラミジアに感染しても無症状のことが多いため 、感染に気付かないままでいると、上行性に感染が拡大し炎症が子宮頸管から子宮、卵管、卵巣、骨盤にまで広がる骨盤内炎症性疾患(PID)(子宮内膜炎、卵管炎、卵巣炎、骨盤腹膜炎)を発症するおそれがあります。卵管炎は、卵子の輸送機能を低下させることがあり、これにより卵管妊娠(子宮外妊娠)が生じる可能性があります。また、炎症によって卵管内が癒着し、卵管が閉塞することで不妊症の原因にもなります。
肝周囲炎(女性)
骨盤内炎症性疾患がさらに進行し、肝臓の周囲にまで感染が達する場合があります。この状態は肝周囲炎と呼ばれ、激しい上腹部痛を伴うことがあります。
クラミジア性結膜炎 (男性・女性)
クラミジアが目の結膜に感染した場合、クラミジア性結膜炎(トラコーマ)を発症します。症状としては、結膜の充血、まぶたの腫れ、目やにの増加などが見られますが、これらは一般的な結膜炎の症状と似ているため、見過ごされることがしばしばあります。しかし、症状が進行すると、結膜に隆起が生じ、これが徐々に大きくなる場合があります。
直腸感染 (男性・女性)
直腸に感染が生じた場合、約70%の患者は無症状ですが、軽度の下痢や肛門に関連する症状が現れることがあります。また直腸に多発する白色調半球状隆起(イクラ状粘膜)を認めます。感染の経路としては、アナルセックスが主な要因とされている他、性器の感染が尿や頸管分泌液を介して直腸に流入することによって感染が広がると考えられています。また、体内での感染拡大の可能性も存在します。
検査
クラミジアの検査は、男性は尿、女性は腟ぬぐい液で検査します。 咽頭(のど)への感染はうがい液または咽頭ぬぐい液、肛門への感染は肛門ぬぐい液で検査します。※当院は男性専門のため、女性の検査は行っておりません。
検査のタイミング
感染の機会があった場合、直ちに検査を実施することが可能です。症状の有無や感染から経過した時間に関わらず、検査を受けることができますので、ご心配な点がある際には、早めに検査を受けることをお勧めいたします。
検査費用
費用 | 5,500円(税込) |
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検体 | 尿・うがい液・咽頭ぬぐい液・肛門ぬぐい液 |
結果 | LINE・メール・SMS |
即日検査 | 結果 60分後(※新宿院では即日検査は行っておりません) |
通常検査 | 結果 2~4日後 |
郵送検査 | 結果 検体到着から2~4日後 |
治療費用
費用 | 11,000円(税込) |
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治療 | 抗生物質の内服(1~7日) |
クラミジアの治療には、ジスロマックやグレースビットといった抗生物質の服用が推奨されており、これにより完全に治癒することが可能です。
ジスロマックは一度に4錠服用することで、効果が7~10日間持続するとされています。一度の服用で治療が完了するため、一般的に使用されています。比較的多く見られる副作用は下痢です。
グレースビットについては、1日1錠を7日間服用することが推奨されています。グレースビットはジスロマックに比べ副作用としての下痢が発生しにくい利点がある一方で、1週間にわたり毎日薬剤を服用しなければならないため、飲み忘れがないように注意する必要があります。
治癒判定
抗生物質の服用終了から2週間後に、治癒確認検査を受けます。この検査により、クラミジアが治癒したかどうかを確認します。検査結果が陰性であれば、治療は終了となります。1回の治療でのクラミジアの治癒率は80~90%ですので、治療に失敗した場合は、抗生物質を変えて再度治療を行います。
予防
クラミジアの感染を予防するためには、性行為(オーラルセックス含む)の際にコンドームを使用することが重要です。コンドームは100%の効果を保証するものではありませんが、感染リスクを低下させる効果があります。また、不特定多数の人との性行為を避けることも重要です。自らが感染していることを認識した場合は、パートナーにも検査を受けるように促すことが推奨されます。自身が治療を受けた場合であっても、パートナーが感染している状態であれば再感染の可能性があります。したがって、双方で同時に治療を行うことが、いわゆる「ピンポン感染」を防ぐためには重要です。
よくある質問
クラミジアは自然に治癒しますか?
一般的に、クラミジアは自然治癒することはないとされています。ただ、治療は薬の服用のみで簡単に行うことができますので、気になる症状がある方は早めの受診をお勧めいたします。
クラミジアは完治しますか?
クラミジアは完治する病気です。ただし、一部の患者においては薬が効かない場合もあるため、治療後には、治癒確認検査を受けて完治したかを確認することが重要です。治癒確認検査で陽性となった場合には、異なる薬での治療が行われます。
一度感染したら、二度とクラミジアには感染しませんか?
いいえ、一度感染してもクラミジアに対しては免疫がつかないため、再度感染する可能性があります。
クラミジアは日常生活で感染しますか?
いいえ、クラミジアの感染経路のほとんどは性行為です。日常の生活で感染することはありません。
クラミジアはキスでも感染しますか?
キスによる感染はほとんどないとされていますが、ディープキスによって伝播する可能性が指摘されています。しかし、その詳細についてはまだ十分に理解されていないのが現状です。
セックスの後に喉が痛むのはクラミジアが原因ですか?
オーラルセックス(自分の喉と相手の性器が接触する場合)では、クラミジア感染の可能性があります。ただし、風邪など他の疾患でも喉が痛む場合がありますので、検査を受けることをお勧めいたします。
私は症状がないのですが、パートナーがクラミジア陽性でした。どうしたらいいですか?
クラミジアは感染していても無症状であることが多い疾患ですので、検査を受けなければ自身の感染の有無は判断できません。また、クラミジアは感染力が非常に高く、陽性の方との単回の性行為による感染率は30〜50%とされています。パートナーが陽性であることが確認された場合は、ご自身も検査を受けることを強くお勧めいたします。
感染の可能性からどのくらい経過したらクラミジア検査を受けられますか?
クラミジアの潜伏期間は1〜3週間とされていますが、症状が発現していなくても体内にクラミジアが存在する場合は検出可能です。したがって、症状の有無にかかわらず、感染の可能性がある時点からすぐに検査を受けることが可能です。
クラミジアの治療期間はどのくらいですか?
治療開始から治癒確認まで、2〜3週間程度を要します。薬の服用は1〜7日間行い、その後2週間を空けて治癒確認検査を行います。検査で陰性が確認されれば、治療は終了となります。
クラミジアは保険で検査、治療ができますか?
はい、保険診療で検査、治療が可能です。※当院は自由診療のため保険診療は行っておりません。
治療中の注意点を教えてください。
アルコールは薬の効果が減弱する恐れがありますので、控えてください。また、治癒の確認ができるまでの間は、オーラルセックスを含む性行為も禁止となります。完治する前に性行為を行うと、相手に感染を引き起こすリスクがあります。これにより、治療を終えたにもかかわらずパートナーから再度感染する「ピンポン感染」が起こる可能性がありますので、注意が必要です。
クラミジアに感染すると他の病気にもかかりやすいと聞いたのですが。
クラミジアに感染した尿道や子宮頚部の粘膜は防御機能が弱まるため、他の細菌やウイルスが侵入した場合、感染を引き起こしやすくなります。その結果、他の性感染症を併発する確率が高くなります。