梅毒
梅毒とは
梅毒は梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)による細菌性の性感染症です。2023年の全国の梅毒の感染者数は1万4906人であり、2012年の感染者数(875人)から急速に増加傾向にあります。
原因
感染者の皮膚、粘膜、体液、血液に存在する梅毒トレポネーマが、主に性行為(セックス、オーラルセックス、アナルセックス)により感染します。
症状
梅毒の症状は、感染後の経過で第1期~第4期までの4段階に分けられます。1期と2期は「早期顕性梅毒」と呼ばれ、3期と4期は「晩期顕性梅毒」と分類されています。治療の進歩に伴い、現在では3期や4期に進行することはほとんどなく、2期までの比較的初期に診断され、治療が行われています。
【第1期】感染後3週間~3ヶ月
性器や肛門、口唇などの皮膚や粘膜に梅毒が感染が感染すると、コリコリしたしこりやびらん、潰瘍が現れることがあります。見た目に反して、痛みなどの自覚症状はほとんどありません。また、股の付け根のリンパ節が腫れることもあります。特別治療をせずに放置しても、これらの症状は自然に消失します。しかし、体内から病原菌(梅毒トレポネーマ)が消えたわけではなく、性的な接触があると他者への感染のリスクがあります。
【第2期】感染後3ヶ月~3年
第1期のまま未治療でいると、梅毒は全身に広がり、第2期となります。この段階では、手のひらや足の裏を含む全身に赤い斑点(バラ疹)が現れます。発赤疹は治療を行わなくても一時的に消えることもありますが、抗生物質による治療を行わない限り、体内の病原菌が消えることはありません。
【第3期】感染後3年~10年
梅毒が第3期になると全身で炎症が進行します。その結果、皮膚以外にも肝臓や腎臓、骨、筋肉に硬いしこりやゴム種と言われるゴムの様な腫瘍が形成されます。ゴム種は周りの組織を破壊していきます。
【第4期】感染後10年~30年
第4期に至ると、心臓の血管や脳の中枢神経が侵され、大動脈瘤の形成や心不全、進行麻痺、歩行障害といった神経障害が現れ、最終的には死に至ります。
検査
梅毒はRPR法(脂質抗原法)とTP抗体法(TPHA)の二つの検査方法を用いた血液検査により診断します。
RPR法は梅毒の活動性を評価し、TP抗体法では梅毒に特異的な抗体を検査します。RPR法は梅毒以外でも陽性にあることがあり(生物学的擬陽性)、TP抗体法では治癒後も終生陽性となる場合があります。
検査のタイミング
感染の機会から6週間経過していれば検査可能です。
検査費用
費用 | 5,500円(税込) |
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検体 | 血液 |
結果 | LINE・メール・SMS |
即日検査 | 結果 30分後 |
通常検査 | 結果 1~2日後 |
郵送検査 | 行っておりません |
治療
梅毒の治療は抗生物質の内服または筋肉注射です。内服の場合、最低4週間の期間服用が必要ですが、筋肉注射の場合は1回で治療が完了します。
治療費用
抗生物質の内服(4週間) | 22,000円(税込) |
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抗生物質の筋肉注射(1回) | 22,000円(税込) |
治癒判定
治療終了後、4週間ごとに血液検査を行い治療効果を判定をします。RPRが陰性化もしくは治療前値の1/4に低下したことが確認出来れば治癒と判定します。TP抗体は治療後も陽性のままになることが多いですが、治療前値との比較で治癒判定の参考にします。
予防
梅毒の感染を予防するためには、性行為(オーラルセックス含む)の際にコンドームを使用することが推奨されます。コンドームは100%の効果を保証するものではありませんが、感染リスクを低下させる効果があります。また、不特定多数の人との性行為を避けることも重要です。自らが感染していることを認識した場合は、パートナーにも検査を受けるように促すことが推奨されます。自身が治療を受けた場合であっても、パートナーが感染している状態であれば再感染の可能性があります。したがって、双方で同時に治療を行うことが、いわゆる「ピンポン感染」を防ぐためには大切です。
よくあるご質問
梅毒は自然に治りますか?
いいえ、梅毒は自然治癒しません。適切な抗生物質による治療が必要となります。
梅毒は完治しますか?
はい、適切な治療を受けることにより、通常1〜2週間程度で完治します。
一度梅毒にかかれば、二度と梅毒にはなりませんか?
いいえ、梅毒トレポネーマに対しては免疫は形成されないため、一度梅毒となっても、再度梅毒を発症することがあります。
梅毒と他の性病に同時にかかることはありますか?
はい、梅毒は性器にびらんや潰瘍などが出来るため、ウイルスや細菌に感染しやすくなります。梅毒だけではなく、他の性感染症の検査も同時に行うことをお勧めします。
梅毒は日常生活で感染することはありますか?
いいえ、梅毒の主な感染経路は性行為であるため、日常生活で感染することはほとんどありません。
梅毒はキスで感染しますか?
口唇やその周囲に病変があるとキスで感染する可能性があります。
梅毒は無症状でも感染しますか?
はい、梅毒は症状が消失する期間があります。症状はありませんが、体内には梅毒の病原菌が存在しますので、感染する(させる)リスクがあります。
梅毒はうつりやすいですか?
はい、1回の性行為での感染率は15~30%と高率です。オーラルセックスを含めて性行為を行う際は、梅毒の予防にコンドームの使用が重要です。
パートナーが梅毒に感染しました。どのように対処すべきでしょうか?
ご自身に自覚症状があるかどうかを確認してください。自覚症状がなくても、感染している可能性があるため、梅毒の検査を受けることをお勧めします。
梅毒の治療をした後、すぐに性行為を行っても問題ないでしょうか?
治療から4週間経過した後に、治療効果の判定を行います。梅毒の多くは治癒しますが、治療効果の判定には数ヶ月の期間が必要な場合もあるため、性行為は梅毒が治癒したことを確認したあとにしてください。
ヤーリッシュ・ヘルクスハイマー反応とは何ですか?
梅毒の治療を開始した患者の10~35%に全身倦怠感、発熱、頭痛、悪寒、筋肉痛、さらには一時的な病変部の悪化が発生すると報告されています。これはヤーリッシュ・ヘルクスハイマー(Jarisch-Herxheimer)反応といわれ、体内の病原菌が抗生物質により大量に死滅し、その過程で細菌内に含まれていた毒素が血液中に放出されることが原因と考えられています。通常、症状は治療開始後1〜4時間ほどで始まり、24時間以内に軽快することがほとんどです。
治療後、症状が改善しません。治ってないのでしょうか?
梅毒は活動性の指標であるRPRの陰性化をもって治癒と判断しますが、陰性化しない場合もあります。その時は、治療前の値との比較で判断しますが、一見治癒したかに見えて、完全には治癒できていないケースもあります。症状が改善しない場合は、再度検査を受けることをお勧めします。