精液検査
不妊症の50%は男性側が原因
不妊症(避妊を行わずに性交渉をしているにもかかわらず、1年間妊娠しない状態)の約半数は、男性側に原因があるといわれています。したがって、男性が精液検査を受けることは不妊症の原因検索や治療方針を決定する上で非常に重要です。国立社会保障・人口問題研究所が2021年に行った「第16回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」によれば、不妊検査や治療を受けている夫婦が前回の18.2%から22.7%(4.4組に1組)に増加しています。
精液検査とは
精液検査とは、精子の量や質を検査し、妊孕性(にんようせい:妊娠するための能力)を確認するために行われる検査です。精液検査には回数や年齢の制限はなく、用手的(マスターベーション)に採取された精液を用いて、数種類の項目を検査します。
精液検査を受けられる医療機関
精液検査は、大学病院や総合病院の泌尿器科、産婦人科、不妊治療専門医院などで実施されています。専用の採精室などもあり、精液を採取後すぐに検査を行えるメリットがあります。反面、すぐ近くにスタッフが常駐しており、特にスタッフが女性の場合、羞恥心などから初めて精液検査を受ける男性にとってはハードルが高く感じるかもしれません。また、上記の医療機関の中には精液検査には対応していないところもあるため、事前に確認する必要があります。
当院の精液検査の流れ
予約は不要ですので、ご都合の良い日時に直接ご来院ください。
精液採取用の専用の容器をお渡し、事前に検査料金をお支払い頂きます。
自宅で採取した精液を2時間以内にクリニックにご持参ください。※当院には採精室はございません。
提出後、1週間後に結果が判明しますので、再度受診していただき医師より結果の説明を行います。
精液検査の注意点
精液検査を正確に行うために、以下の点にご留意ください。
禁欲期間は2日〜7日
世界保健機関(WHO)のガイドラインに基づき、2日以上7日以内の禁欲期間後に精液の採取をお願いします。禁欲期間が短い場合は精子濃度が低くなり、長い場合は運動率が低下する場合があります。
精液の全量採取
正確な検査を行うために、精液は全量を採取してください。
異常があった場合は再検査
精液の状態は、禁欲期間や睡眠不足、疲労やストレスなどさまざまな要因で変動するため、検査結果に異常があった場合は複数回の検査をおすすめします。
精液検査の正常値について
WHOでは1年以内にパートナーが妊娠した男性の精液所見を調べ、その下位5%を下限基準値として報告しています。
2010年に発表された下限基準値(第5版)では調査対象地域はアメリカ、ヨーロッパ、オセアニアでしたが、2021年発表の下限基準値(第6版)ではこれら地域にアジア、アフリカが加わりより世界的なデータとなっております。なお、下限基準値には第5版と第6版で大きな変化はありませんでした。
検査項目 | 下限基準値 |
---|---|
精液量 | 1.4ml | 精子濃度 | 1600万 | 総精子数 | 3900万 | 前進運動率 | 30% | 運動率 | 42% | 正常精子形態率 | 4% | 生存率 | 54% |
精液検査の検査項目について
当院の精液検査では、「精液量」、「精子濃度」、「総精子数」、「精子運動率」、「精子正常形態率」、「pH」の6項目を検査します。
精液量
精液の量を計測します。基準値よりも著しく少ない場合には逆行性射精が疑われることがあります。
精子濃度
精液1mlあたりの精子の数を測定し、精子濃度を算出します。精子濃度が基準値以下の場合は乏精子症が疑われ、精子が全く存在しない場合は無精子症と診断されます。
総精子数
精液料と精子濃度から総精子数を算出します。
精子運動率
精子運動率は、精液中で動いている精子の割合を示します。動かない精子が多く存在する場合、精子が卵子に自力で到達することが難しくなり、受精率が低下する可能性があります。基準値を下回る場合には精子無力症と診断されます。
精子正常形態率
精子正常形態率は、精子の形状及び大きさを観察し、正常な形を持つ精子の割合を算出します。基準値未満の場合には奇形精子症が疑われます。さらに、奇形精子の割合が高いときには受精率が低下し、仮に妊娠に至った場合でも流産のリスクが増加することが報告されています。
pH
高いpH(>8.0)は感染の可能性があり、低いpH (<7.2)は精嚢の閉塞の疑いがあります。
検査費用
1回 14,800円(税込)
よくあるご質問


精子を採取する2日前より射精を控えていただく必要があります。ただし、8日以上射精を行わない場合には、運動率が低下する可能性があるため、禁欲期間が2日~7日以内の採取をお願いいたします。


特に時間帯に制限はありませんので、いつの時間でもかまいません。ただし、採取した精液は2時間以内にクリニックにお持ちいただく必要があります。


コンドームには殺精子剤が含まれているものがあり、精子の運動率に影響を与える可能性があるため、コンドームを使用した精液採取はおやめください。


精子は精巣において断続的に生成されていますので、マスターベーションによって精子数が減少することはありません。むしろ、射精頻度の増加により、精子の運動率が向上する可能性もあります。


精子の質や量を改善するためには、バランスの良い食事がとても重要です。特に、亜鉛や抗酸化物質(ビタミンC・E、リコピンなど)、オメガ3脂肪酸、葉酸を多く含む食品を積極的に摂ることが効果的です。具体的には、牡蠣や赤身肉、トマト、ブルーベリー、青魚、ほうれん草、アボカドなどが精子の生成や運動性をサポートします。一方で、トランス脂肪酸を含む揚げ物やジャンクフード、過剰なアルコールやカフェイン、糖分の多い加工食品、大豆製品の摂りすぎなどは精子の質に悪影響を及ぼす可能性があります。喫煙も精子にとって大きなリスク要因です。


精子の数や質を高めるには、生活習慣の見直しが重要です。禁煙・節酒・ストレス管理・十分な睡眠・適度な運動が精子の質向上に効果的です。また、精巣を熱から守るために長時間の入浴やノートPCの膝上使用は避け、締め付けの少ない下着を選びましょう。また、必要に応じてマカやL-カルニチンなどのサプリメントを活用するのも一つの方法です。